Photography by Jun Yokoyama, Text by 麻芝拓
先週、渋谷のスターラウンジで開催されたイベント「BS03IS」のフォト&レポート。UKのブリストルからYoung Echoの2人 Ishan Sound、Rider Shafiqueを迎え、会場は超満員。
スタート予定の24:30になっても当然のようにドアは開かない。時折、スタッフが出入りする扉の隙間から漏れ聞こえる低音のリズムが、焦らすようにこの夜も間違いないことを伝えてくる。25:00、ようやくスタートとなった頃には、既に多くのヘッズが入口前に集まっていた。
The Chopstick Killahz
オープニングは最近、多くのイベントに呼ばれている注目株The Chopstick Killahz。Ishan SoundもRider Shafiqueも、前日のDommuneでのプレイを「新しい世代だね」と見入っていた。BS0では毎回、このトップバッターに“○○セット”とお題を与え、その解釈を披露してもらっているのだそうだが、今回は“儀式ダンスホール”。なんというジャンルなのか謎——いや、括れないからこそのDJを聴かせてくれた。
DISC SHOP ZEROの出店では、Wax Alchemyがカットした未発表ダブプレートが10枚限定で販売され、あっという間に完売。今回のイベント〜ツアーを記念して制作された7インチ・レコードや、無料の耳栓もどんどん減ってゆく。
Bim One Productions
続いてDJブースに立つのはBim One Productions。長年の盟友でもあるeastaudio SOUNDSYSTEMとの相性もバッチリで、未発表のダブプレートやこの日のためのスペシャルも連発し、Chopstickからの流れを受けオーディエンスをグイグイと揺さぶる。ホストMC、Ja-geも登場し、この後に続くメイン・アクトに向けてフロアを振動で暖めてゆく。この日に合わせるようにブリストルからやってきた、IshanやRiderとも旧知の仲で、自身のシステムも運営しているサウンドマンが「この空間、このムード。Pinchたちが10年前、まだダブステップってジャンルが浸透する前にやっていたことを思い出したよ」と言っていたのが印象的だった。
NATURAL VIBEZ
Bim Oneの後にはヒューマン・ビートボックスでレゲエを演奏するNATURAL VIBEZのショウケース。BS02で登場したDubkasmのキラー「Victory」を、喉と口から生まれる音だけでカヴァーすると、場内にも大きな歓声が起こった。
26:30、遂にIshan SoundとRider Shafiqueが登場。前回終演時の発表からの9ヶ月を待ちわびたオーディエンスが、最高潮の盛り上がりで2人を迎える。
Ishan Sound & Rider Shafique
まずは16chのミキサーとエフェクトを駆使したライヴPA。Ishan Soundが自身の曲をフェイダーを激しく上げ下げしながら繰り出し、その上を“ヴォイス・オブ・サンダー”Rider Shafiqueが呪術のようなトースティングで場をコントロールする。サウンドシステムも過去最高の凶暴さで震え、みぞおちをえぐるようにリズムを叩き込んでくる。約60分のライヴの後は、自身や仲間のダブプレート/別ヴァージョンをつかったDJプレイ。
クルーのひとりが後日「彼のレゲエは過剰なラスタ感がなくて、グライムというにはドライで……という案配が、テクノやダンスホールなどアチコチからの影響に出て混ざり合っていて。それが『新世代』の『ブリストル・サウンド』なんだよなあ」とツイートしていたが、作品単体やホーム・オーディオではなく、音と振動を浴びるように身体ごと感じることで、Ishan Soundの多指向性が本来的にはひとつのものなのだということが理解できた。それこそが、サウンドシステム・ミュージックの魅力であり魔力だ。
Soi
Ishan SoundとRider Shafiqueのダブ(ステップ)の熱狂を受け継ぐのは、SoiクルーからDxとOsam Greengiantのバック・トゥ・バック。UKの現場さながらに、ジャングルとドラム&ベースの打撃リズムがフロアを休ませない。新宿ドゥースラーのDONが現場から発した「BS0はハーコー」というツイート通りの光景。本当のハードコアは、ここでステップを踏み続けた君たちだ。最後の音が止むまで、多くのオーディエンスがフロアに残り踊り続けているのも、BS0ならではの光景かもしれない。
会場の外では、中での熱気を冷ますようにお喋りをする人々。その光景は、日本ではあまり見られないものだ。そういえば、BS0の会場をStar loungeに選んだ最大の理由のひとつがこれだ、と聞いたことがある。「イギリスでは公民館とか集会場を借りて、サウンド・システムやDJ機材を持ち込んでイヴェントをやるし、会場の外ではいつも誰かがお喋りをしているんだよ。そんな風景を日本でも見たいよね」。
ラスト・チューンの合図とともにスクリーンから投影されたのは「see you next... BS04GF」の文字。ここからまた次のBS0までの新しい物語がスタートした。まだ体験したことがない方は、BS0が生む空間を次こそ体験してほしい。
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