写真家のホンマタカシが東京・東神田のギャラリーTARO NASUで11/18~12/24まで個展『Various camera obscura studies - inprogress』を開催する。
本展はホンマタカシの、窓とカメラオブスキュラへの関心をテーマとする展覧会である。カメラオブスキュラとは、ラテン語で暗い部屋を意味する。壁の穴から部屋に入り込む太陽光が、穴の反対側の壁に屋外のイメージを逆さまに映し出す。この仕組みを応用したのがピンホールカメラである。
ホンマは建物の一部屋をピンホールカメラとし、建物の窓をシャッターレンズとした『Pinhole』シリーズを撮影してきた。暗室と窓の作り出す図像は都市を逆さまに映し出す。その情景は実際の街そのものである一方で、私たちの普段観る世界とは異なる影の世界を結実させる。
作家はこのピンホール写真に編集を行うこともある。例えば、黒い円をシートで被せ太陽と模した『黒い太陽』や、わざと反転させた文字や数字を加えて、逆さまの世界に正体した図像を作り出す『N.Y.』や『11』といった作品。ピンホールという作家の主観から離れた手法に敢えて編集を加えることで、実世界と異世界との境界、階層がより複雑化される。
カメラオブスキュラへのホンマの関心は撮影を始めた2013年から継続している。2015年には太宰府天満宮や鉄道芸術祭、2016年には岡山のCCCSCD by cifakaでカメラオブスキュラのワークショップを開催するなど、様々なシチュエーションで作品を制作し続けている。 作家は『Pinhole』シリーズを「都市で都市を撮る」シリーズだと述べている。そのシャッターは窓。窓は外と内、公と私を分ける境界線であり、かつ世界を捉えるフレームとなるものである。
また、ホンマはコルビュジェ、ニーマイヤーなど著名な建築家の建築物も多く撮影している。その『Architectural Landscapes』シリーズの中で頻繁に撮影されている対象が窓辺である。窓を通して覗かれる風景。ピンホールシリーズとは異なる、外部の光そのままの屋外の景色。
窓をフレームとして撮影された「外」の風景を眺めるとき、写真というフレームの存在は希薄になる。建築物もまた「外」から眺めるべき構造物としての存在感を失うことで、被写体としての建築物が有していたコンテクストから解放される。そして鑑賞者とその視線を包み込む空間として、異なる意味と位置づけで画面に立ちあらわれる。
幾重にも切りとられたこれらの風景は、改めて私たちの見るという行為、そして「写真とは何か」を問いかける。
<Info>
ホンマタカシ| Takashi Homma
『Various camera obscura studies - inprogress』
2016 年 11 月 18 日(金)-12 月 24 日(土)
火-土 10:00-18:00 日月祝 休
*Reception for the Artists: 2016年11月18日(金)18:00 - 20:00
TARO NASU
〒101-0031 東京都千代田区東神田1-2-11
T: +81-(0)3-5856-5713 F:+81-(0)3-5856-5714
www.taronasugallery.com