米大統領選の共和党候補指名争いで首位を走る不動産王Donald Trump。彼の人気の秘密は、人種間対立を煽る過激な発言、もしくは政策なのか、彼の風貌なのか、それらは議論のタネになっているが、何と言っても彼がテレビのリアリティ・ショーに長年出演し、彼の人となりやサクセス・ストーリーが身近に感じられるからという見方もある。しかし、その「人気者」のトランプは大統領選のテーマソングを選ぶにあたって、なかなか苦労している。
彼がキャンペーン・ソングに用いようとした、Neil Young、Aerosmith、Rolling Stones、Elton John、Adelleらに、彼らの曲の使用を断られており、4月5日にはラップ・グループHouse of PainのEverlastに「おい、Trump。おれの"Jump Around”を選挙で使うのをやめろ。てめぇに停止命令の手紙を送ったからな」と言われてしまう始末。さらに彼はFacebookとInstagramを通じて「おれはTrumpよりもBernie Sandersを支持する」とスタンスを表明した。
そのEverlastに支持されている民主党大統領候補のBernie Sandersのキャンペーン・ソング選びは順調に進んでいるようだ。「民主社会主義」を掲げるBernie Sandersは、最低時給を15ドルへの引き上げ、医療保障・社会保障制度の拡大、公立大学の授業料無償化などの政策を掲げ、若年層の人気を得ている。それらの左派的な政策から、ミュージシャンからも支持を得ており、Neil YoungやSimon & GarfunkelのArt Garfunkelが楽曲の使用許可を出したり、Red Hot Chilli Peppersからの支援も受けている。「Bernie」の愛称で呼ばれる、Sandersが”It’s A Revolution”と名付けられた新しいキャンペーン・ビデオをYoutubeで公開したのだが、このビデオで使用されたのは、Sanders支持を表明しているDiploの”Revolution"だったのだ。ここでEDMの曲が使われるのは驚きであり、新鮮さを感じさせるものだった。Diploは以前にも「もしBernie Sandersが負けたら、2018年までインドにいるよ」とツイートするなど、Sandersを積極的に支持している様子だ。
大統領選が盛り上がってくるにつれて、どの陣営はどのようなキャンペーン・ソングにも注目が集まるのだが、キャンペーン・ソングではなく、ある「アンチ・キャンペーン・ソング」を巡ってちょっとしたトラブルも起きている。
ラッパーのYGとNipsey Hussleが、3月30日にDonald Trumpを強烈にディスする"FDT"という曲をSoundcloudに発表した。これは"Fuck Donald Trump”の頭文字の三文字で、トランプに直接抗議をした黒人学生の声のサンプリングから始まり、「白人は好きだけど、お前は好きじゃない」とTrump批判ヴァースの連続だ。
ニュースサイトのTMZによると、YGの呼びかけで”FDT”の「ミュージックビデオ」の撮影が4月3日にロサンゼルス市街で行われ、100人を超える人が集まった。しかし、通報により対暴動用の装備を付けた警察が駆け付け、撮影はそこで中止になった。TMZが、撮影の様子や警察が撮影に集まった人たちを解散させる様子を伝えるInstagramのポストをいくつかクリップしている。
Donald Trumpが、共和党の指名に王手を掛けようとしているが、次期大統領が選出される今年11月まで、どのようなアクションが音楽を通して生まれてくるのか、ということにも目が離せない。