【対談】MÖSHI × kiki vivi lily 『Waiting』|ストーリーを伝えるために

NYの名門美術大学パーソンズ大学院在学中のミュージシャン、ファッションデザイナーのMÖSHIが、kiki vivi lilyを迎えたニューシングル『Waiting』をリリースしミュージックビデオを公開している。 これまでのMÖSHIのダークでインダストリアルなテイストとは打って変わって、爽やかなサマーチューン。自身が大ファンだったというkiki vivi lilyのボーカルの魅力を活かした1曲となった。2人を迎えた対談でも、この楽曲の成り立ちや、両者の楽曲制作のスタイルにまで話は及んだ。 取材・構成 : 和田哲郎 撮影 : Leo Youlagi - MÖSHIさんの3rdシングルとして“Waiting feat. kiki vivi lily”がリリースされましたが、どういうきっかけで曲作りが始まったのでしょうか? MÖSHI - 1stシングルも2ndシングルも、こういうコロナ渦の状況になって、僕的には結構ポジティブに捉えてるんですけど、今作ってるアルバムではもっと色々な人の意見を入れたいなとか、色んな人の状況をベースにストーリーを作りたいなっていう部分があって。例えば“Painting”ではこの状況をベースにどうリアルを描いていくかっていうところで「描く」っていう意味だったり、“Your Name”ではずっと家にいる中で記憶が遠ざかっていくとか、名前もそれで象徴になっているかなっていうところで。“Waiting”は昔を懐かしむじゃないですけど、最近って人を待つことがあまり無くなったなって思って。オンラインで会うようになって、そこで昔人を待ったり待たされたり待たせたりっていうところにある種のノスタルジーを感じて。そこをベースにリリックを書きました。  - これまではもう少しアブストラクトな、一曲の中で風景が変わっていくような歌詞が多かったですが、今回は凄くストレートというか。ある意味ポップス的なストレートさを持っていると思うんですけど、それは元々そういうところも含めて狙っていたところですか? MÖSHI - そうですね。特に今年に入ってからのシングルは、1stシングルと2ndシングルはもう少しアブストラクトな部分があったと思うんですけど、それでもそういうエレクトロニックミュージックの要素を入れつつも、僕としては前回のEPよりだいぶポップに仕上げるようにしていて。それは今年自分の作品がもっと多くの人に届くようになればいいなっていうところで、意図的にポップに仕上げたところです。ただその中で、自分がやってきたクールなことも無くさないでポップにしたいっていうところで、フィーチャリングのアーティストを探している時にR&Bからポップスまで色んなところでご活躍されてるkiki vivi lilyさんの声を入れたいと思って。  - kiki vivi lilyさんの声を入れたいというのはどういうところからですか? MÖSHI - 元々曲が先に出来ていて、「待つ」とか「待たされる」というところに違う立場のもう一人のキャラクターが曲の中にいた方がいいなと思って。そこで女性シンガーを入れたいと思ったんですけど、そもそも僕がイメージしてる曲の「ポップだけどクール」っていう感じの歌声だから、kiki viviさんと絶対にやりたいなと思って。お会いしたことも無かったんですけど、お願いさせて頂きました。  - それを受けていかがでしたか?曲を初めて聴いた時の印象を伺いたいです。 kiki vivi lily - 私は結構、すごい尖ってくるかなと思ってたんですけど、ポップで耳に残る感じで嬉しくて。こういうトラックに自分の声を乗せてみたかった感じだったから、凄くワクワクしました。  - じゃあ、元々のMÖSHIさんのイメージとしてはもう少しエッジーな感じだったんですね。 kiki vivi lily - そうですね、音源で聴かせて頂いてた時はそうでした。   - 今回は歌詞もMÖSHIさんが書いていますが、歌詞はどのようにして決めたんでしょうか?全部最初から出来上がっていた? MÖSHI - 出来てはいなくて。そもそもkiki viviさんの曲が好きなので、フィーチャリングするんだったらkiki viviさんのファンの方にも喜んで貰えたらなと思って、kiki viviさんの歌詞からフレーズを少しずつ取って物語を作ったんです。だから最初オンラインでミーティングした時に、勝手に入れていたので「大丈夫かな?」と思ったんですけど(笑)。でも快くやらせて頂いて。そこからは任せて頂いてそのまま書いていったんですけど、当日まで直しちゃったんで本当に申し訳なくて。でも細かく対応していただけて、助かりました。 kiki vivi lily - いえいえ(笑)。  - MÖSHIさんが書いたkiki viviさんをイメージした歌詞は、ご本人的にはいかがでしたか? kiki vivi lily - 凄く不思議な感覚でした。自分が書きそうな感じなのに、自分じゃない人が書いているものを歌うっていうのが初めての感覚で、凄く楽しかったです。すごいですよね。本当に曲を聴いてくれてるんだなっていうのを感じて嬉しくなったし、こんな歌詞を私も書きたいと思いました(笑)。 MÖSHI - それめちゃくちゃ嬉しいですね。kiki viviさんとのミーティングがあるまでずっとkiki viviさんの曲を聴いて、ずっと考えていて。「どう書くかな?」とか。不安な部分もあったんですけど、僕が今まで書いた曲の中では一番ストレートな歌詞なので凄く難しかったんですけど、そう言ってもらえて良かったなと思います。 kiki vivi lily - 凄く昔の曲からも引用してくれて、嬉しかったですね。  - MÖSHIさんから見て、kiki viviさんの歌詞の良さや好きな部分はどういうところですか? MÖSHI - やっぱり自分と凄く違うっていうのが魅力的なのかなと思っていて。僕はいつも、直したいところでもあるんですけどアブストラクトになりすぎたり、自分にしかよく分からないような、自分の中では凄く理解出来てるんだけど伝わりづらいようなところがあって。でもkiki viviさんの歌詞は、ストレートなところもありつつ比喩を使っていたり、ストーリーがとても伝わりやすいんですよね。それって実は凄く難しいことだと思って。ストレートに素敵な物語を曲で作るのがいかに難しいかを、今回歌詞を作ってみて改めて思いました。もちろん曲も好きなんですけど、作詞の部分でもそういうところが凄く好きですね。  - そういう伝わりやすさは、曲を作っている時に意識する部分ですか? kiki vivi lily - そうですね。あまり難しくしようとは考えていなくて。直接的すぎないけど、直接的なところのバランスを凄く考えて書いたりはします。後は単純に、あんまり難しい言葉書けないなっていうのもあるんだけど(笑)。 MÖSHI - 多分そこのバランスの取り方が僕よりも圧倒的に上手くて、そこがアーティストとして尊敬するところで。僕もそういう歌詞を書けたらいいなと思うんですけど、そこのバランスの取り方がまだ上手くないかなと思います。  - 特に聴いてた曲はなんですか? MÖSHI - 特に聴いてた曲は、『vivid』に入ってる“Waste No Time”ですね。凄くカッコいいと思って。 kiki vivi lily - 嬉しい。 MÖSHI - 僕はあの曲凄く好きですね。でも一番最初に聴いたのは唾奇さんとの“Good Enough”だったんですけど、そこが入り口でkiki viviさんの作品を聴いていって。もちろん他にも素晴らしい曲が沢山あるんですけど。 kiki vivi lily - たしかにあれはMÖSHIくんが好きそう。  - 特に好きな部分はどこですか? MÖSHI - やっぱりkiki viviさんの曲って、アルバムによってもカラーが違うし、アルバムの中でさえも色んなトライをしているなと思って。ちょっと懐かしいポップス感がある曲もありつつ、“Waste No Time”みたいなカッコいい感じの曲もありつつ、アルバムの中で色んな表情が見えるのが好きで。後は、結構生っぽい音がある感じが、僕は結構バキバキの感じが多いので、この前のMVの時も話させて頂いたんですけど、やっぱり信頼しているミュージシャンの方とかを組み立てていて。もちろん打ち込みとかもありつつ、生の音とかバンドセットも凄くカッコいいし......すみません、収拾がつかないんですけど(笑)。でもやっぱり、色んな表情が見えるところですね。一つのスタイルだけじゃなくて、色んなことにトライしてるって部分がkiki viviさんの曲の好きなところです。  - その辺りは、お互いにスタイルは違えど、MÖSHIさんも一曲の中に複数のジャンルが入っていたり、エクレクティックな感性みたいなのが共通点なのかなと思いますね。実際のレコーディングはいかがでしたか? MÖSHI - kiki … Continue reading 【対談】MÖSHI × kiki vivi lily 『Waiting』|ストーリーを伝えるために