【インタビュー】Ross From Friends | エモーションとユーモア

2010年代のダンスミュージックシーンのトレンドとなっている、ローファイなハウスシーンからそのキャリアをスタートさせたRoss From Friendsは、今年Flying Lotusが率いるレーベルBrainfeederと契約しファンを驚かせた。一瞬で決まったという契約のやりとりのスピード感そのままに、アルバム『Family Portrait』を7月にリリースした彼は、先月開催されたSONIC MANIAでのBrainfeederステージにも出演した。

その自由な発想でエレクトロニックミュージックの可能性を軽やかに広げるRoss From Friendsに来日中に渋谷の喫茶店で話を聞いた。

取材・構成 : 和田哲郎

通訳 : Aimie Fujiki

- 日本にはいつから来てたんですか?

Ross from Friends - 日曜日にソウルから来て徘徊してるよ。東京に来る前は、東京に来たら一人で徘徊してビルを眺めるようなイメージだったから、そのイメージ通りの生活をしてるね。

- 散歩を?

Ross from Friends - 毎日ずっとね。暑いから、汗をずっとかいて(笑)

- 東京で気になる場所はありましたか?

Ross from Friends - 新宿はもう、ヤバかった。カッコよくて、良い意味で変でした。ここにいる間に一人でぶっ飛んだことをやりたいとずっと思ってたんですけど、一人だからこそまだそのぶっ飛んだことのイメージも出来てないし、まだ出来てない(笑)

- ぶっ飛んだこと?

Ross from Friends - ちょっと、あまり自分でもわからないけど、東京について色々リサーチしすぎていて、ロボットレストランとか、手に人形を付けて喋る店員さんがお客さんの顔を引っ叩くレストランがあると聞いて(笑)

- 作品にもその好奇心旺盛な感じが出てますよね。

Ross from Friends - もちろん。好奇心で出来てるものも沢山あって、やる前に「いや、ダメだろ」じゃなくて取り敢えずやってみようみたいな気持ちで常に作ってるので、好奇心で出来ていると言えるよ。

- それはスケーターとしての経験から来てるんですか?

Ross from Friends - 今作ってる音楽に関してはスケーターだったころの自分はそんなに関係ないかもしれない。今はプロのミュージシャンだから、スケートをする時間もないのでスケートが今の音楽に影響してるということはないけど、DIY的な感覚だとスケートもカットアンドペーストするような作業も多いし、DIYで自分たちでランプを作ったりするっていう部分では、今の音楽の作り方には似てるかもしれないね。

- この間のアルバムもすごく幅が広いというか、色々なジャンルが入ってますよね。どういう作り方をしてるのかなっていうのは凄く興味深かったです。

Ross frtom Friends - 全曲違う作り方をしていて、一個一個のトラックにとても時間をかけてる。ポップミュージックを12時間ぶっ通しで聴いて、2、3ヶ月かけて一曲を作るみたいな。作り方とかきっかけは毎回違うけど、その曲の中のソリッドなエレメントというか、毎回使ってる音とかコード進行とかは自分の中にあって、それは変わらないものなので、全曲違うけど共通しているように聴こえるのは自分の中の核となる部分があるんだよね。

- ソリッドな部分というのは説明し辛いかもしれないですけど、具体的に自分ではどういう部分だと思いますか?

Ross from Friends - エモーショナルな部分だね。フィーリングと感情のようなもので、例えばキーボードを弾いているときにこのコードを弾いたらすごくエモい気持ちになるとか、そういうフィーリングに従って、何回その音やコードを聴いても同じ気持ちになるので、それが自分のソリッドなところなのかなと。

- エモーショナルな部分を重視してるというのは曲を聴いていても分かりますね。

Ross from Friends - それはすごく嬉しいよ。

- 昔からそういうエモーショナルな部分を重視するような子供でしたか?

Ross from Friends - 100%そうだったね。子供の頃はもちろんそうだったけど、音楽に対してのエモーショナルな部分はあまりなくて、物とか人に対してね。ティーンエイジャーになると音楽に対してそれを強く感じるようになって、その頃はインディーズ系のバンドをすごく聴いてて、聴くうちに自分の気持ちを整理できなくなったり、鳥肌が立ったり涙が出たりするような経験をするようになって、もう少し大人になってからダンスミュージックやレイヴミュージックを聴くようになって、ダンスミュージックの中にもその要素があると感じてから今に至ります。バンドとかは感情的な部分にストレートに突っ込んでいくと言うか、例えば「鬱」というテーマだったらそれをストレートに出しすぎていると思うようになって来て、ダンスミュージックは音の中にエモーショナルさを感じたとしても、聴いてる人が自分の解釈とか自分の気持ちに沿ってエモーショナルになれるところに惹かれました。

- バンドは直接的すぎるということですか?

Ross from Friends - ダンスミュージックが直接的でない訳ではないけど、ダンスミュージックの方が相手がどう感じるかって言う可能性とか選択肢が広いと思うね。バンドをやっていたのは15歳くらいのときなんだけどね(笑)バンドをやっているときは自分と同じ気持ちの仲間と音楽をやれて、それがその時の一番の財産だったね。共感出来る相手たちがいて、音楽をやってるときは可能性はなんでも感じられたし、良いと思うことはやり続けられるし、ずっとオープンな気持ちでいられたからその楽しさとか一緒にバンドをやるコネクションは、今の音楽には感じないから、そのコネクションがバンドをやっていたときの経験の中で一番大事にしているものです。

- Boiler Roomでのセッションではバンドをやっているときのような一体感を感じました。相手が出す音に対して嬉しそうだったり。

Ross from Friends - あのセッションをやっているときは自分たちでもバンドをやっている感じがすごくしてたし、セッションをやっているのも結局スタジオで音楽を作っているときの延長線上みたいな感じで。スタジオに入ってるときもトラックのループを二つだけ持っていって、サックスとギターの人がフレーズを作って、その音を足して曲が作られていくんだよね。ライブでもレコーディングのときもアドリブをしまくるメンバーなので、ライブの時の気持ちはスタジオで音楽を作っているときの延長線上にあるね。

- Ross from Friendsはアーティストとして、エモーショナルな部分だけでなくユーモアの部分も大事にしていると思うんです。例えばRoss from Friendsっていうアーティスト名もだし、アーティストネームをどんどん変えてたりもするし、ユーモラスな部分はどうやって作られていったんですか?

Ross from Friends - ユーモラスな部分が僕の性格の一部なんだよね。ふざけるのも大好きだし、そこを特に大事にしてるんじゃないけど、強すぎて漏れ出てるんじゃないかな。たまに真面目にやるときはやるけど、そうじゃないときは僕は全然だめです。ふざけることしかできないときもあるから、それはもう自然と出てるものなんだよね。

- それはお父さんやお母さんなど、家族の影響もあるんですか?

Ross from Friends - 親がずっとそんな感じ。お母さん側の家族が「キャックル」っていう魔女っぽい笑い方をするんだよね。母方の女性がみんなその笑い方で笑うので、受け継がれてる。僕もやるけど、ここではやらせないでほしい(笑)

- 最近一番笑ったことはなんですか?

Ross from Friends - 日本に来てからは一週間くらい一人なんだけど(笑)ここにくる前はいつだろう...。僕たちが笑うときは基本的に、すごくダークなことか誰にも理解されないレベルの変なことだから、今話しても誰も笑わないかもしれないけど、バックステージでバンドメンバーとふざけてて、ウォーターボードをしようって言って、誰かが寝て、その人の顔にタオルを乗せてそこから水をかけたりして、それが死ぬほど面白かった(笑)バカバカしくてしょうがない。

- Brainfeederと契約して、あなた自身の音楽性も自由さを増してどんどん変わっていくと思うんですけど、今はやっていないけど、音楽的に今後やってみたいことなどありますか。

Ross from Friends - 100%あるね。でも今はあまり言いたくない(笑)誰かに知られちゃうから。これは秘密だけど、もっとアップテンポな感じのダンスミュージックを作っていきたいかな。あるシーンに入っていきたいと思ってるけど、そのシーンに関しては秘密なので教えられない(笑)突っ込んでいって失敗する可能性もあるし。

- その新しいシーンでやるとしたらまた名前が変わったりもするんですか?

Ross from Friends - わからないけど、変えようかなっていう自分のイメージを作ってみたりもしたけど、Ross from Friendsはすごく長く使ってる名前だし気に入ってるし、出来るだけ長くこの名前を使って「こんなダサい名前でこいつどうやってダンスミュージックシーンで長く生きてきたんだろう」っていつか思われたい(笑)

Info

タイトル:Family Portrait
アーティスト:Ross From Friends
レーベル:Brainfeeder
リリース:2018.07.27
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9714

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