【インタビュー】加藤ミリヤ 『Femme Fatale』 | ヒップホップ好きの人に面白がってもらいたい

FEATURED  2018.06.20  FNMNL編集部

昨年末に"新約ディアロンリーガール feat. ECD"を発表して、その動向に注目が集まっていた加藤ミリヤがニューアルバム『Femme Fatale』を本日6/20(水)にリリースした。

今作はChaki Zulu、RIKI、JIGGといったプロデューサーに加え、注目のラッパー・JP THE WAVYが参加して制作された。今回FNMNLでは、なぜ彼女が自身のルーツであるヒップホップ/R&Bに立ち返った作品を制作したのかを聞いた。

取材・文:宮崎敬太

きっかけは"新約ディアロンリーガール feat. ECD"

- 通算10枚目のオリジナルアルバム 『Femme Fatale』に、日本のヒップホップ/クラブシーンの最先端で活躍するプロデューサーたちを招いたのはなぜですか?

加藤ミリヤ - "新約ディアロンリーガール feat. ECD"がきっかけですね。もともと、私は言葉を先に書いてそこに合わせて歌を付ける、という作り方をしていました。でも"新約~"ではRIKIくんが再構築した"ディア ロンリーガール"のトラックから、私が歌を、ECDさんがラップを入れていったんです。あの曲を作ったことが起爆剤となって、面白いプロデューサーたちともっと作品を作ってみたいと思うようになりました。

- プロデューサーはどんな基準で選んだのですか?

加藤ミリヤ - 単純にいまやってみたいと思った人に声をかけています。アーティストでもプロデューサーでもクリエイターでも、常に新しい才能と仕事をしてみたくて。

- 確かに、理貴さんを起用したのもかなり早いタイミングでしたね。

加藤ミリヤ - 2016年のアルバム『LIBERTY』ですね。KOHHくんの"飛行機"で彼のことを知ってすぐに声をかけました。理貴くんは若くて才能のあるプロデューサーだと思います。しかも誠実で、仕事も早い。いつもこっちの求めたものに対して120%で応えてくれます。そういえば、理貴くんとやるまで年下の人と曲作りしたことがなかったんですよ。それまではどの現場に行ってもずっと私が一番年下だったから、新しい世代のプロデューサーが出てきたことがすごく嬉しかった(笑)。

- 若い世代といえば、今回はJP THE WAVYさんをフックアップしました。

加藤ミリヤ - WAVYくんと知り合ったきっかけは、Spikey Johnが監督してくれた"新約ディアロンリーガール feat. ECD"のMV。WAVYくんがちょこっとだけ出てるんですよ。その時にSpikey Johnが紹介してくれました。彼はすごくスタイリッシュでホットな存在。"Cho Wavy De Gomenne"やAwichさんのビデオに出てるのを観て、一緒にやりたいと思ってたんです。

- "顔も見たくない feat. JP THE WAVY"はWAVYさん主導で作られたそうですね。かなり思い切った判断だと思いました。

加藤ミリヤ - 昔だったら私が提案した世界観にWAVYくんをハメるようなやり方をしてたかもしれない。でも、今はWAVYくんが作った曲が良くなければ「嫌」と言えるくらいの立場ではある(笑)。それに自分の色はどうやっても出てしまうものだから、今回はとりあえず彼に任せてみようと思ったんです。プロデューサーのJIGGさんもWAVYくんが紹介してくれました。WAVYくんはすごく覚えやすいリフレインを作る才能がある。私にも経験があるけど、今の彼はいろんなアイデアが出やすい時期だと思う。そういう時は自分のメロディやフロウを出せるだけ出したほうがいいんです。そしたら「顔も見たくない」を連呼するフックを作ってきてくれて。そんな発想は私の中にはなかったから、やっぱり任せて良かったと思いましたね。

Chaki Zuluアレンジの仮歌に……

- さらに今回はChaki Zuluさんが参加されています。

加藤ミリヤ - 彼とはずっと一緒に仕事をしてみたかったんです。きっかけは"Don’t let me down"。もともとこの曲には私がギターを爪弾いて作った、ロックっぽい雰囲気の原曲があるんです。これをヒップホップ/R&Bっぽい雰囲気で誰かにアレンジしてほしかった。それでChakiさんに声をかけてみたんです。でも正直ちょっと無茶振りに近いオファーだし、断られるかなと思ったらOKしてくれて。しかも「浮かんできました」とか言って、すぐにこのトラックを送ってきてくれたんですよ。

- このゴスペルっぽい雰囲気はChaki Zuluさんからの提案だったんですね。

加藤ミリヤ - そうそう。私も「そうくるか」って感じでびっくりしました。しかも送られてきたトラックにすっごいゴリゴリの仮歌が入ってて。すごいインパクトの強い仮歌だったので、それで気になってChakiさんに聞いてみたら「あっ、Awichです」って。二度びっくりですよ(笑)。本人が気に入ってくれて、歌ってくれたみたい。逆に、こちらこそありがとうございますって感じでしたね。Awichさんともいつか一緒にやってみたいな。

- Chaki Zuluさんはタイトルトラック"Femme Fatale"もプロデュースしていますね。

加藤ミリヤ - この曲は最後のほうに作りました。私、いつもアルバムを作る時は先にタイトルを決めるんですよ。『Femme Fatale』というタイトルで私がイメージしたのはストロングウーマン。覚悟を持って一人を愛すると決めた女性というか。それでいて、フェミニンでセクシーでもある。今回のアルバムはほぼ全曲そんなイメージの下、歌詞を書いていきました。この曲は、アルバム全体のテーマである「Femme Fatale」をしっかり描きたい、と思って作ることにしたんです。アルバムの1曲目だし、掴みとして重要な曲。だからChakiさんにお願いしました。

- "Femme Fatale"はどんなサウンドをイメージして制作したんですか?

加藤ミリヤ - "Femme Fatale"という強い言葉に負けない音というのが重要でした。遅くて沸々と燃えたぎるような雰囲気をイメージしました。ビートにはルーム感があって、タムが「ダッーン」と響いてるような。早くて盛りあがるのは嫌だった。Chakiさんのスタジオで、いろいろ曲を聴きながらこちらのイメージを伝えていきました。彼は本当にいろいろな音楽を聴いているんですよ。アンダーグラウンドな最先端の音も、いわゆるヒットチューンも。だから制作自体はかなりスムーズでしたね。唯一、私がBPMで悩んじゃって。トラックが遅くても、私が言葉を詰めれば早く聴かせることができるし、ミックスでどの音を立たせるかで雰囲気も変わる。そのバランスをどう考えるかで迷っちゃった。

- ちなみにアルバム制作時にミリヤさんはどんな音楽を聴いていたんですか?

加藤ミリヤ - ずっと聴いてるのはKelela。"LMK"という曲は100万回くらいリピートしてます(笑)。アルバム 『Take Me Apart』を聴いた時はマジで天才だと思ったし、Aaliyahを思い出したりもしましたね。Kelelaはルックスも好き。カッコいいし、PVのやりすぎてる感じもいい。あとはJorja Smithの"Blue Lights"とか。あの雰囲気をどうやったら出せるか、ものすごく研究しました。あと"Funny Love"は、Lana Del Reyのヴォーカルのエフェクトやエディット感を参考にしてます。彼女のことも1stから大好きです。

「あなたのことが好き」をいかに違う言葉で表現するか

- 今回のアルバムは最先端のサウンドを取り入れた一方で、歌詞ではラブソングが多い。このバランスはマーケットを意識したからですか?

加藤ミリヤ - んー、そういうことではないですね。やりたいことをやったらこうなったという感じ。というのも、マーケット的なことはJ-POPを広く聴いてる人に向けて作った前作『Utopia』でやりきった感があるから。歌詞だけじゃなくて、歌の部分でもカラオケでの歌いやすさを意識したり。私の歌は昔から符割がめちゃくちゃで、1つの音符にたくさん言葉を乗せたりするから、息継ぎする場所も独特で、カラオケですごく歌いづらいと言われていたんですよ(笑)。そういう部分も含めて、すごく突き詰めて作ったからアルバムの内容にはすごく満足してるけど、同時に「これは私じゃなくてもいいかも」と感じる部分もあって。だから今作では、また原点に帰って自分らしい、自分にしかできないことをしようと思ったんです。そう思えたのも、ECDさんとの共演が大きいです。

- なるほど。ミリヤさんがいま表現したいテーマが愛なんですね。

加藤ミリヤ - そういうこと。愛にはいろんな形がある。家族とか、友達とか、仲間とか。でも、私には愛する人がいて、その一人に向かって伝えようとしてる歌が自分の中で一番強い。今の私は自分が恋に落ちた人へのラブソングが好きなんです。だからこういうアルバムになったんだと思う。

- 個人的には"あたしの細胞"という曲にギョッとしました。オリエンタルなトラックに「遺伝子が悦ぶことをLet it burn burn burn burn」という歌詞を乗せる発想はなかったというか。

加藤ミリヤ - この曲、すごいでしょ(笑)。最初はPanjabi MCみたいなインドっぽい曲にしようとしたんだけど、甲高い女性の声や演歌みたいな男性の歌がないと、どう工夫してもインドにはならなくて。最終的にこのレゲエっぽいビートに落ち着いたんです。で、なんとなく聴いてたらサビの「あたしの細胞 yeah yeah yeah」という部分の歌詞を思いついた。最初は私も「“あたしの細胞”って(笑)」と思ったけど、面白いワードではあったから連想ゲーム的に内容を膨らませて一気にスタジオで書いちゃいました。

- ヒップホップ的な作り方ですね。

加藤ミリヤ - 私の歌って、どの歌も基本的に「あなたのことが好き」しか言ってないんですよ。それをいかに違う言葉で表現するかってだけ。私は歌ってそういうものだと思ってる。「あなたと一緒にいられるのってホントに最高!」という気分をどう表現するか。あたしの細胞、遺伝子、血管、血液、命……みたいに想像して、最終的に「新しい遺伝子を作らない?アーイ」になったという(笑)。特に今回の作品はサウンド重視で作ったから、ビートを聴いて瞬発的に出てきたアイデアをできるだけ活かすようにしたというのがありますね。

- すごい音楽体力ですね。

加藤ミリヤ - その瞬間はウルトラマン的に集中します。だいたい30分くらいで書いちゃう。"Funny Love"もそんな感じだし。もちろん迷ったり、サビだけ浮かばなくて空白になることもあるけど、昔から歌詞を書くのは早いほうだと思う。でも私はビートを聴いて最初に受けたインスピレーションをできるだけ大切にしたい。そういうフリースタイル的な部分は昔からあると思う。

食わず嫌いしないで聴いてもらいたい

- ミリヤさんは自分が音楽シーンでどんな存在だと思っていますか?

加藤ミリヤ - どうだろう。そういうことは、あんまり意識してないです。けど、例えばJP THE WAVYをフィーチャーした時に、「メジャーのやつが無理矢理やってんな」みたいに思われない存在ではいたいと思う。私はデビューした時から一貫して、メジャーとアンダーグラウンドの中間という立ち位置を意識してきました。作品によって配分は微妙に変わってはいますけど、基本的には常に中間にいたい。だからこのアルバムが耳の肥えたヒップホップリスナーにどう聴かれるのかは、すごく興味があります。……食わず嫌いしないで聴いてもらいたいな(笑)。

- 自分の音楽性を維持しつつ売り上げも立てて、メジャーとアンダーグラウンドの中間を目指すことは非常に難しいように思えます。例えば、売れるために音楽性を丸くしたり、そこで苦悩することはないんですか?

加藤ミリヤ - 昔はそういうこともありました。10~20代の頃なんていつも泣いてし。目標にしてた枚数に届かなかった時、A&Rに電話して「みんなが頑張ってくれたのに私のせいでゴメンね……」とか(笑)。でも10年前と比べて今はCDが売れないから、音楽性に関しては前よりも冒険できるようになってる。それにレーベルでの私の立ち位置も変わったし。

- 音楽を聴く媒体が、サブスクリプションサービスやYouTubeに移行したことはアーティストの創作にも大きな影響を及ぼしているんですね。

加藤ミリヤ - うん。比較的自由に作れるけど、アルバム全体を短くして何回も聴いてもらえる作りにするとかね。今回のアルバムは13曲も入ってるけど、トータルタイムは50分切ってるんです。1曲目の"Femme Fatale"なんて2分台だし。

- さっき"Femme Fatale"の時に出てきた「トラックが遅くても、私が言葉を詰めれば早く聴かせることができる」という話は、そのあたりも関係してるんですね。

加藤ミリヤ - 制作上のすごく細かいテクニックではあるけど、今回はそういう部分も意識しました。こちらの理想としてはCDを買って聴いてほしいけど、それでもApple MusicとかSpotifyみたいなサブスクリプションサービスに登録しててくれるのはまだ嬉しい。「音楽はYouTubeでしか聴かない」というのは作り手としてはちょっと寂しいかな。

s-miliyah-femme4675

- では最後に今後の活動予定を教えてください。

加藤ミリヤ - 今はアルバムが終わったばかりだから、まだ何も考えてないです。けど、Chaki Zuluさんとはもっと一緒に曲を作りたいし、若い人とももっといろいろやってみたいと思ってます。逆に私が一緒にやったら面白い人、いませんか?

- 若手だったらBAD HOP、kZm、KEIJUとか。いまのヒップホップシーンはカッコいい若手がたくさんいますよ。

加藤ミリヤ - ヒップホップを好きな人が喜んでくれたり、面白がってくれることはどんどんやっていきたい。私が音楽を始めたルーツがヒップホップなので。女の子はいませんか?

- ゆるふわギャングのNENEさんとか。

加藤ミリヤ - 私、若い子に曲を書いてみたいんですよ。歌の上手い下手は置いておいて、声がカッコいい人がいい。声はどうやっても変えられないから。

- そういえば、RINA SAWAYAMAが好きだと別のインタビューで話していましたね。

加藤ミリヤ - 彼女のことは大好きです! 90'sヒップホップのエッセンスもありつつ今の音を鳴らしている人がカッコいい。「ネオ東京」みたいな感覚。今回のアルバム『Femme Fatale』も、聴いた人がそういう雰囲気を感じてくれたら嬉しいですね。

s-miliyah-femme4291

Info

2018年6月20日(水)19:30〜@東京都・昭島モリタウンMOVIX前ガーデンステージ ※フルバンドでのパフォーマンス!!
2018年6月27日(水)19:00〜@愛知県・アスナル金山 あすなるステージ
2018年6月29日(金)19:00〜@大阪府・なんばパークス2F キャニオンコート特設ステージ
※各イベントの参加方法などの詳細はコチラ→  http://www.sonymusic.co.jp/artist/Miliyah/info/495565

▼ライブ情報▼
2018年6月22日(金)[東京]” MILIYAH BIRTHDAY BASH LIVE 2018“STUDIO COAST Open18:00 / START 19:00
2018年7月5日(木)[ 北海道 ] Zepp Sapporo Open 18:00 / Start 19:00
2018年7月7日(土)[ 宮城 ] 仙台サンプラザホール Open 17:00 / Start 18:00
2018年7月12日(木)[ 広島 ] 広島JMSアステールプラザ 大ホール Open 18:00 / Start 19:00
2018年7月15日(日)[ 鹿児島 ] 鹿児島市民文化ホール 第1ホール Open 17:00 / Start 18:00
2018年7月16日(月・祝)[ 福岡 ] 福岡サンパレス Open 17:00 / Start 18:00
2018年7月23日(月)[ 新潟 ] 新潟県民会館 大ホール Open 18:00 / Start 19:00
2018年7月25日(水)[ 石川 ] 北陸電力会館 本多の森ホール Open 18:00 / Start 19:00
2018年7月28日(土)[ 岐阜 ] 岐阜市民会館 大ホール Open 17:00 / Start 18:00
2018年7月29日(日)[ 静岡 ] 静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール Open 17:00 / Start 18:00
2018年7月31日(火)[ 京都 ] ロームシアター京都 メインホール Open 18:00 / Start 19:00

▼加藤ミリヤ WonderGOO守谷店 GOO st. イベント▼
WonderGOO全店にて、アルバムを購入した人の中から抽選でご招待!!
実施日:2018年7月14日(土)14:00OPEN / 15:00START
※応募方法・参加方法などの詳細はコチラ→ http://www.sonymusic.co.jp/artist/Miliyah/info/495567

2018年6月18日(月)より、特別衣装展も開催中!

▼リリース情報▼

Miliyah-FemmeFatale-tuujou-H1-1
加藤ミリヤ NEW ALBUM『Famme Fatale』(読み:ファム・ファタール)
発売日:2018年6月20日
【初回生産限定盤】CD+DVD、LPサイズジャケット&ミニポスター仕様ブックレット ¥4,500+tax (SRCL-9817)
【通常盤】CD only ¥3,056+tax (SRCL-9819)

-CD収録内容-(初回/通常共通)
1. Femme Fatale (produced by Chaki Zulu)
2. I HATE YOU (produced by the Sknow)
3. 私の名はイノセンス(arranged by Shuya, Gakushi)
4. 貴方はまだ愛を知らない (Produced by Shingo.S)
5. Funny Love(arranged by Gakushi)
6. あたしの細胞(Produced by the Sknow by Shuya, Gakushi)
7. 新約ディアロンリーガール feat. ECD (Track Produced by RIKI)
8. 顔も見たくない feat. JP THE WAVY (Produced by JIGG)
9. KING / QUEEN(Produced by the Sknow)
10. オンリー・ロンリーマン (Produced by RIKI)
11. Don’t let me down (Produced by Chaki Zulu)
12. BURN (Arranged by Shuya, Gakushi)
13. ROMANCE(Album Ver.) (Produced by Shingo.S)

-DVD収録内容-(初回のみ)
1. "新約ディアロンリーガール feat. ECD" Music Video
2. "I HATE YOU" Music Video
3. "顔も見たくない feat. JP THE WAVY" Music Video
4. ROMANCE Music Video 〜Bonus Movie〜 Making of "ROMANCE" Music Video
iTunesでの予約はコチラ→https://itunes.apple.com/jp/album/id1392845032?at=10lpgB&ct=4547366365566_al&app=itunes
その他、アルバムの予約はコチラ→ https://smr.lnk.to/miliyah0620WN

MUSIC

FASHION

CULTURE