SZAがニューアルバム『Ctrl』について語る

Kendrick Lamarらを擁するTDE (Top Dawg Entertainment)所属のシンガーSZAが、LAのラジオ局Real 92.3の番組『Big Boy’s Neighborhood』に出演した。6月9日にニューアルバム『Ctrl』のリリースを控えているSZAは、ボリュームあるカーリーヘアの上からヘッドホンを着け、同アルバムや肥満だった過去、TDEメンバーとの関係、トランプ大統領によるイスラム教徒入国制限などについて語っている。

音楽との出会い

SZAが音楽のキャリアを志すようになったのは、意外にも偶然のようだ。幼少期に体操やダンスに夢中だった彼女は、大学では海洋生物学を専攻し、水族館の飼育員を目指していた。シンガーとしての道を歩み始めたきっかけは、ラッパーである兄の作品に誘われて参加したことのようだ。当時はどのようなテーマで歌っていたのかという問いには、こう答えている。

「『あなたの奴隷になるくらいなら死んだほうがマシ』とか『手首を切って注意を引く』とか、そんなことを歌ってた。自分自身になりたいと思って。学校を中退したり、お金を浪費したり、彼氏にお金と時間の無駄だと思われたりして、両親をがっかりさせてた。誰かに属してるような気がしてた。」

TDEと契約して本格的に活動するようになった彼女は、当時をこう振り返る。

「おかしいの。Punch(TDEの共同社長の一人)と一緒に車の中で曲を書いてて、なんとなく自分の将来のことを考えてたの。5年前には「200人くらいは熱狂的なファンがいるかな」って思って、それから「EPでも出そうかな」って思って、「コーチェラにも出れるかな」なんて考えてた。おかしいでしょ? 私にとっては新しくて奇妙なことだった。(手のひらを横にして)ここを超える自分すら想像できてなかったから。」

では、RCAと契約した今は?

「何かこれまでと違うことが起こってるのを感じる。(準備はできてる?)誰も準備なんてできないと思うの。でも、ワクワクしてる。」

『Z』から『Ctrl』へ

SZAはこれまで、2013年に『S』、2014年に『Z』というEPをリリースしている。それらに続く作品名は当然『A』になるものと思われていた(並べて“SZA”になる)が、ニューアルバムのタイトルは『Ctrl』だと発表された。彼女に何が起きたのだろうか。

「人として成長してる時、スキルを身につけて卒業して次のステージに進むこともできるし、全部スキップしてまったく新しい人間にもなれる。どこかで自分が招いた外部からのトラウマの量に耐えきれなくなって、『A』は全然、違うなって思ったの。自分の出自について語り続けることもできたんだけど、4年も経って、アルバムを製作し始めた頃とは全然違う生活になったから。たくさんの愛する人を見送ったし、多くを失って、多くを得て、多くを学んだ。卒業するよりもスキップしたいって思った。」

『Z』に比べて『Ctrl』はどのような作品になっているか、との質問には、

「(『Ctrl』のほうが)より正直で、勇気ある作品になってると思う」と答えている。

ロールモデルはお母さん

男社会のTDEに身を置くSZAにとって、自らを導いてくれるような存在の女性はいるのだろうか。

「特にこの業界だと、年上の女性で知り合いがいないの。そういう人がいればなとも思うけど、お母さんが素晴らしい人で、私にとっては女性の頂点なの。だからこの業界でメンターを求めないのかも。」

家族のようなTDEの中で誰と一番仲が良い?との問いには、「みんな違ってみんないい」としながらも、ScHoolboy Qのことをこう話している。

「こないだ初めて(ScHoolboy) Qとニューヨークで一緒に居たんだけど、最高に楽しかった。彼ってほんっと、面白いの! ScHoolboy Qだから当然面白いってことは知ってたんだけど、同じレーベルだからとかじゃなくて、普通に。21 Savageのショウでモッシュして、人を押しのけて酔っ払ってた。」

TDEメンバーについては他にも、一緒に銀行強盗をするならScHoolboy Q、一緒に映画を観るならIsaiah RashadかAb-Soulなどと答えている。

90kgからの減量法

インタビューの中で、SZAはホストのBig Boyと同様に太っていた過去についても触れている。

「200ポンド(≒91kg)あったの。5, 6年前かな、そんなに昔のことじゃないの。病気になって病院に行くまで自分の体重も分からなかった。」

病院に行った頃には、暴食が祟って太っていたことに加え、胃のサルモネラ菌が他の臓器にまで影響を及ぼし、軽い心臓発作のような状態だったのだそうだ。サルモネラ菌の影響で、今でもグルテンや乳製品は食べられないのだとか。そこから「自分の身体について学ぶ」ことで体重を落としていったという彼女は、食生活についてこんなことも話している。

「けっこう最近まで牛肉も食べてた。健康に気を遣うようになって最初の頃はロービーガン(生菜食)だったんだけど、本当に痩せて、お腹が減ってイライラしたから、また赤肉を食べるようになったの。お父さんが心臓発作を起こして、血液型に応じて食べるものを選ぶように教わったから、同じ血液型の私もパレオダイエット(旧石器時代食)を始めたけど、赤肉は身体に合わなかった。」

ムスリムの子供たちへ

イスラム教徒として育ったSZAは、トランプ大統領によるイスラム教徒の入国制限について耳にした時、信じられない思いとともに、学校で9.11以降差別に遭っていた過去を思い出したという。同じ境遇にいるムスリムの子供たちへは、次のようなメッセージを送っている。

「同じ境遇の子供たちに言いたいのは、それはずっと続くわけじゃないってこと。(いじめている)子供たちも自分が無知で間違ってるって解ってるし、そうじゃないとしても、あなたはきっと大丈夫。ここから状況は良くなる。私も当時誰かにそう教えてほしかった。(中略)私にできることは、子供たちや差別を受けてる人々をサポートすることだけ。重要じゃないことについて文句を言うのに浪費している時間は無いから。」


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奧田翔(おくだ・しょう)

1989年3月2日宮城県仙台市出身。会社員。SZAの"Drew Barrymore"は2017年の個人的ベストトラックの一つ。

https://twitter.com/vegashokuda

http://ameblo.jp/vegashokuda/

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