世界のシーンをリードするサウンドシステムのエンジニアが語るサウンドシステムカルチャーの本質

オーディエンスからの質問 - これまでのサウンドシステムカルチャーでネガティブな体験はありましたか?

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) -
ウンドシステムカルチャーはネガティブなところからスタートしたけど、そこでみんなでパーティーの為に協力しあって、ゴールを目指すんだよ。もちろん意見は割れることもあるけど、最後はみんな協力しあう。そんな大きなマーケットのビジネスじゃないから、Jeromeがビジネスの競争相手になることもあるけど、別にぶっ潰すそうとか、そういう考えなんてお互い思ってもいないし、結局俺たちは協力しあうんだよ。

Mark Iration(Iration Steppas) - サウンドシステムは、愛とファミリー的っていうけど、昔はアンプに関してはお互いどんなデザインをしているか隠してたかな。もちろん助けあう友達でもあり愛でもあるけど、正直俺たちの世界ではサウンドシステムに関して言うと、ボクシングマッチのタイトルマッチと一緒のガチンコの世界だと思ってるよ。

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - Mark、あなたのスピーカーを使わせてもらった時は、スピーカー飛ばしておくね(笑)

Mark Iration(Iration Steppas) - Mungo’sに電源を借りたこともあるし、とにかくお互い助けあう部分はあるけどな…まあそれが愛的なものかね。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - Mark、あなたはこのシーンでテクノロジーがどれだけ変わったかってことを話してたけど、そのことに関して言わせてもらうと、未だにスピーカーっていうのは、紙と磁石と木を使っているから、そんな変わってないと思うんだよ。ただ、今はサウンドシステムのコントロールの仕方が変わっただけで、今はもう少し予測はできるようになったし、スピーカーやアンプを飛ばすこともなく、もっと信用ができるシステムになったよね。

6万年前に火の前で皆んなが踊ってたのもそうだけど、俺たちは今でもそれを求めて同じことをしているだろ?俺たちは今でもそれを求めてる。何が違うかっていうと、今はシステムオペレーションに規制があったり、逆にできないことも増えたんだよ。OUTLOOK FESは良いけど、ロンドンのノッティングヒルカーニバルに関しては85デシベルのリミットがあったり、騒音の規制があったり、騒音問題には参ってるよ。パーティーを求める人々の期待は変わってないし、システムの質はさらに良くなっているのに、その間にそれを止めるものがあるのがつまらないんだよね。

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - 確かにサウンドシステム規制があって、僕らはそういう事と戦っていかなきゃならないんだよね。サイレントディスコみたいなのもでてきただろ?

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - UKのFabricもそうだけど、騒音規制の件もあってクラブの多くがクローズしている状況だよね。人々にはパーティーをして良いサウンドを楽しむっていう権利があるんだろ?でも、たまにこう言った考えを理解してもらえない事もあるんだよ。ヘッドライナーが凄いこうした大きなフェスも良いけど、やっぱり地元のローカルのヴェニューでの活動ってのも大事なんだよ。このフェスで、こんな美しい場所でデカイ音を流せるのは最高だけど、国に戻れば大きな問題もあるんだよ。UKでもカルチャーが変化しているけど、やっぱりそこではローカルシーンのサポートが皆から必要だよ。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - ちょっと一言いたいんだけど、今は変化の時代だよ。多分、ここ3、4年の間に色々と変化してポジティブで新しい時代がまた来るとも思うんだ。お金を持っている人がたくさんいる世界だよね。政治だとか面倒臭い話の前に、きっと根っこ(ルーツ)に戻ってくると思うんだよ。もうすでに色んなことが起こってるし、規制があったとしても、俺たちは、行くべき場所、やるべき事が分かっているから別に気にしなくていいんだよ。

僕はマレーシアに住んでいて、毎年イングランドに戻ってくるんだけど、どれだけ規制されているか感じるけど、それは分かっている事だから。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 60年代70年代とか、昔のジャマイカンカルチャー、全てはポジティブなメッセージは今でも生きてるしね….
メッセージがこうして生きてきているんだ。ヒップホップであれ、ドランムンベースであれ、全てはポジティブなからのメッセージは今でも生きてるしね…

Rog Mogale (VOID Acoustics) - そうなんだよ、だからパニックを起こす必要はないんだよね。僕はそんなに心配してないよ。

オーディエンスからの質問 - 行政に営業停止を受けているFabricについて聞かせてください。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 過去の文化に戻っても人々はただ良い時間を過ごしたいと考えてると思うんだよね。そこで、リスクとかいろんなことが出ててきて怖くなって、ライセンスを取って合法化したよね。Fabricがオープンしてから6人の死者が出たけど、警察は取り調べかなにか分からないけど108人をも殺しているんだよ。だから、政府に対しては音楽のカルチャーを守る訴えを起こしてるし、そこはみんなで協力を促しあって助け合う必要があるんだ。Fabricの問題は、ガキが警察を見てパニックを起こして持ってるドラッグを全部食ったりしてることもあるんだよね。だから、誰かがそういったことのサポートをしなきゃならないんじゃないかな。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - 僕の意見としては、ナイトクラブではドラッグは必要ないと思うんだよね。ナイトクラブはドラッグを学べる環境じゃないと思うし、たくさんやるべきじゃない。ドラッグをやるなら誰かあなたをケアしてくる人がいるとこで、若い時に沢山やって、いろんなものをやって、きちんとしたドラッグをやるべきだよ。いろんなドアを開けて、必要なものは全て学べばいいんだよ。そしたら、そのドアが分かったら、もうやらなくなるんだよ。ただ、ナイトクラブでやるなよ。あそこはドラッグやるにはバカな場所じゃないか。

ドラッグは良いよ。俺もいろんなドアを開けて、道を探してきたけど、俺はそこでラッキーだったかな。ドラッグをやってもいいけどクラブでやるな。そして自分の道がわかったら辞めればいんだよ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - このドラッグについての意見は、ここだけの話で、OUTLOOKフェスティバルとは関係のないあくまで個人の意見です(笑)

Electrikal SoundsystemのRicardoからの質問 - そうだね〜ここでの僕の質問は…いえ、実は僕は特に質問とかないんですけど、JeromeとKyleがミュージックシーンにどう関わってるかって、Jeromeのことをそんな多くの人が知っているわけじゃないと思うけど、君は僕のサウンドシステムを設計してくれたよね。そしてKyleは、仕事の手助けをしてくれてる。僕ら皆んなはここにいる人たちに感謝すると共にミュージックシーンに貢献してくれている事に敬意を評すべきだと思うんだ。(会場から拍手)

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) -
このサウンドシステム文化は凄くルーツがしっかりした文化なんだ。今もこうして、お金を払ってこういったフェスの場に来てくれて、僕らが何をやっているかを体験しに来てくれる皆んなに凄く感謝してるし、それを光栄に思う。だから、敬意を評したいのは、君達になんだよ。

Electrikal SoundsystemのRicardo - 僕は自分自身にも問いてたんだけど、様々な事が重なってサウンドシステムの世界では、いつかモチベーションが消えてしまうのではないのかなって事を考えてたんだ。結局はモチベーションが僕らを突き動かすんじゃないかなとは感じているよ。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - それって本当に色々な事が混じりあってるよね。そこには、競争もあるし、それがシステムに新しい方法を見出して更に良いものしていく。何か問題が起きれば、解決しては何とかしていくんだ。スピーカー飛ばしたりね(笑)

Mark Iration(Iration Steppas) - さっきも言ったけど、今はインターネットを通じてシステムを早く設計する事ができるだろ、すぐに自分のサウンドを作れるんだよ。だから、競争が今ベースにあってそれが突き動かしてるとこもあるんじゃないか?どこのヴェニューに行っても、違うPAがいてサウンドは一緒じゃないってことをここで覚えておきたいよね。そこでサウンドにはいつも変化がある。金銭的なことを言うと確かに金は必要なんだよ。だからそこで大事なのは熱意、そこに俺たち自身を捧げる事だ。時間を掛けたっていいんだから。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - 話の途中でごめん、そこに付け加えたいのは、僕はそれが運命、自分の使命だと思うんだよ。自分は牛乳屋さんになるって使命じゃないだろ?自分が何をすべきか、やりたい事があるだろ?それを追求して自分が求めてる自分になりたいと思うはず。そこで一番残念なのは、何人かの人たちは何かを追求し続けて実はそれが自分の道じゃないと思ってガッカリする事だよね。でも、そこで単に自分が行くべき道を学ベばいいだけだろ。

Mark Iration(Iration Steppas) - 沢山の人達が道を追求するけど、そこでは数人が選ばれる。シンプルな話だ。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - 俺たちはラッキーだと思う。俺は毎日自分の全てを自分のやりたい事に捧げられている。それが俺の人生だ。最高の人生だよ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 俺はこうして素晴らしいチームが周りにいて色々とやれる事が素晴らしいと思うんだよ。誰も一人だけで全てを乗り越えられないだろ。

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - 絶対にモチベーションを失っちゃダメだよね。これは誰にでも起こり得る事だけど、いつもトライする事、そこで学んで行く事が大事なんだ。

司会 - 素晴らしい時間をありがとうございました。

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