対談 : 田巻裕一郎 × 那倉太一(ENDON/GGRR) 展覧会『リトミック』について

FEATURED  2017.02.03  FNMNL編集部

- 日本的なモチーフに惹かれる理由はあるんですか?

田巻 - 子供の頃の影響もあるんでしょうね。たとえば特撮ヒーローものとか、デビルマンやマジンガーZあたりをすごく見ていたんですけど、そういうのって最後はヒーローが爆弾持って死んだりするんですよ。ヒーローが責任とって死ぬ、みたいな。こういう精神がどこか頭の中に刷り込まれていて、作品を作るとき、無意識にそこからピックアップして作っているのはあると思いますね。

那倉 - スレスレのテーマが多いですよね。仲良くなって絆が深まってきてるときの表現として、「最終的には一緒に戦争に行きたい」って言われたんですよ。いい表現だなと思ったんですけど、でもとりあえずまず戦争はやめようよって。

- 戦争に行きたいっていうのはどういうモチベーションなんですか?

田巻 - なんだろう、僕には愛国心と、家族や仲間を守りたいっていう強い気持ちがあるんですよ。もちろん、戦争がしたいという話では無いです。そこは間違えないでもらいたいです。でも、もし万が一、戦争が起きてしまったら国や家族のために何かできるんじゃないか、ってことです。それに、オリンピックじゃないけど国のために頑張りましょうっていうのを、いいねって思うんですよね。こういう部分は誰かに教育されたわけじゃないけど、自分の中で繋がってるんだろうなって。

那倉 - 自分としてはオリンピックなんか中止にして欲しいくらいなんで、全くそういう思想は受け入れられないですが、だからといって付き合わないってならないのも大事なことだと思うんですよね。BURZUM聴く聴かない問題みたいな(笑) これまた居心地が悪い。関係性の答えが出てないっていうのが面白みでもあるんですが。本当に酷いこといいだしたら無論たしなめなきゃいけないんだけど、愛国が悪いわけじゃもちろんないと思うんで。レイシズムでもないし、そこは怖がらずに精緻化したほうがいいと思うんですよね。

- 国っていう部分はどういうところから出てきてるのかなと。実際オリンピックのためになにかをするっていうわけではないですよね。

田巻 - 日本人として闘いたいっていうのがあるんです。今はグローバルとか言われてますけど、いやグローバルはいいです、日本人で闘いたいです。っていうのが強いのかなって。作品にしてもそういう部分がどことなく出ていて、ドロッとしてるのかなって。

那倉 - 結果明らかに日本人の所業だと判るような作品が出ることはいいことだと僕は思います。しかし日本として闘いたいというのは僕は相入れないですね。男気のある人って闘争モデルで、「勝ち負け」にこだわることが多いと思うんですが、文化的衝突としての闘いにおける勝ち負けって武器=作品を使用しての「殺す/殺される」関係でなくて、「魅了する/魅了される」関係だと思うんですよね。殺したら観客いなくなっちゃうし。

僕は自分が日本人だということよりも、競争相手としてのアメリカの白人との関係を強く意識せざるを得ない。特に日本でバンドやるというのはそういうことだと考えています。さっき田巻が言ってたグローバリズムの話ですが、バンドもデザインも流通して通じる表現形態を選んでいる時点でグローバリズムに加担してる可能性があって、あくまでグローカルメニュー、例えばマクドナルドの照り焼きバーガーとしてしか、Made in occupied Japanとしての想像力しか実はないんじゃないかって時々思うんです。

 

田巻裕一郎

那倉 - もっと言えば自分なんかは白人の歴史を反省している白人が理性だという教育の中で育ったわけです。そういうことをどう捉え直すかという局面に来ている。右左に回収できないっていうのは明白ですよね。今は右は右でくっついて、左は左でくっついてるじゃないですか。そういうのじゃなくてアートとか音楽になったときの話の現実ってことで、今日も田巻についてきたんですよ。僕は今日手を汚すつもりできたので、それだけしても皆さんに彼を知ってもらいたいっていうのがあるんですよね。1個の作品で考えて、評価するんじゃなくて全部で考えたときに、ハンパないなってなってもらって、この先の動向を追ってもらいたい。だって作風変わってもそれ着てるんでしょ?

田巻 - 着てる、着てる。段々楳図かずおがボーダー着るような感じになればいいのかなって。タレント性は求めていないけど、知ってもらいたいっていうのはある。作ってる分にはまあ見てもらいたいのは普通の感情だと思うんですよね。有名になりすぎるとできないこともあると思うんで、自分らしくやっていければ一番良いのかなって思いますね。

那倉 - 僕は自分がそうできないので、すごくいいと思う。

- 活動を始めたときはどういう作品だったんですか?

田巻 - 子供のときから落書きとか模写みたいなことでずっと絵を描いていたんです。スケボーをやっていたので、デッキのデザインとかMetallicaのジャケットをやっていたイラストレーターのPusheadがすごい好きで、じゃあ僕もイラストレーターになりたいなと思って描き始めたのが、最初でしたね。

Pushead
Pushhead

那倉 - ここが王道なの最高じゃないですか。「Zorlacのシャツめっちゃ買ったよね」って!

田巻 - そこから感覚がイラストレーターからアーティストに変わってく時期っていうのが自分のなかでありました。いろいろシーンを知っていったらイラストレーターの群れがすごい嫌になっちゃって。そこから平面じゃなくて立体になっていって。立体から映像っていうのがあり、今に至るって感じですね。カードの作品以外はひらめきで作ってるようなところがあります。血を使った「自画像」も、あれはシルクスクリーンでプリントしてるんですけど、赤っていいよねって思ったんです。何がいい赤かな、あ。血がいいやって。血は綺麗だけど出せないよねって思ったんだけど、自画像といえばゴッホだ、ゴッホ耳切ったんだよね、と。じゃあ耳を切って血を出すかっていう流れです。それはオマージュ的な要素もあって、すごい合致した感じがして、じゃあ頑張って切ってみようかと思いました。

『自画像』
『自画像』

那倉 - でも血をだしたかったんでしょ?

田巻 - 血を出したら面白いなと思って。なんかパンクの人とか血を出すでしょ。

那倉 - G.G Allin!!!

田巻 - 血ってすごく材料として意味があるものじゃないですか。そういう意味でも血はあの作品に必要だったんだろうね。

那倉 - つまらないこと聞くけど血って伸びとかいいの?

田巻 - 血は伸びがよくなかった。刷れる分量も出せなかったのよ。意外と出なくて、インクの素になるバインダーっていうのがあるんですけど、それと血を混ぜたんですよ。あの作品はその血と、僕が寝てたベッドと、仕事であるシルクスクリーンという技術を使って等身大の自分を作るっていう。ステートメントは真逆の切り口だったからすごく面白かったですよ。ああこういう解釈もあんだねって。自分からは出せない部分が出るから、すごく面白かった。でも真逆だからといって、いや違うよ、とも思わないんですよね。作るのが先であって、作ったあとに自分のコンセプトっていうのが作品的に出てくるんですね。ひらめきで作る分あとから、ああ、これはこうでこうだったんだっていう答え合わせをしているので。人から違うことを言われても、何も知らない目線で見た上で、それがその人自身の答えなのかなって思いますね。

那倉 - 兆候をキャッチしてると思うんですよね。だからそれが右っぽいっていうのもすごくよくわかるというか。「考えるな感じろ」ってすごく保守的な言葉だと思うんですよね。正しさを担保するのが身体性という意味じゃないですか。野村秋介が「右翼っていうのは民族の触角じゃなきゃいけない」って言ってて、その触角ぽさっていうのをすごく感じるというか。やってることも考えるよりも先に身体性があるし、仕事も毎日シルクスクリーンやってるし。切断があまりないというか、仕事も作ることもMy Warを着ることも。だからあの自画像のことを自分だって言い切れる。それは刺激と運動が一体になってるというか、自律してるってことですよね。自律してたら闘うしかないもんね。人生勉強みたいな気持ちとかあんまりないでしょ?

田巻 - うんあんまない。他の人の作品を見たら、どこかで無意識的に出ちゃうときってあるじゃないですか。だから自分からあんまり取り入れてないっていうのはありますね。すごい頭でっかちになっちゃうのが怖いんですよね。誰のどの作品が好きか?と聞かれる時も、作品というよりは精神が好きっていうのはあるんですけど、作品が好きだと言えるのは数人しかいないんです。例えばCharles BronsonってバンドをやっていたMark McCoyってアーティストは、姿勢もアートも本当に愛してますね。売れたくもないし、自分でレコード会社作って、自分でデザインしてる。その人を見るたびいつ見てもいいなって思うんですよね。一番好きかもしれないですね。

Marc McCoy
Mark McCoy

那倉 - あの人自体がすごいアメリカだよね。俺らの上の世代だとDischargeからのっていうのがあるじゃない。でも俺らの世代になるとまた変わってくるんだよね。

田巻 - この人はアートカレッジみたいなの出てベースがすごくしっかりしてるんだよね。洗練されてますね。

那倉 - ルーツがアメリカのものは多いっていうのはあるんじゃない?

田巻 - Black Flagも、スケートもそうだよね。さっき言ってた影響が出ちゃってるもののひとつかもね。見れば見るほど寄ってきちゃうみたいなところが自分の中にもあるから、あんまり見ないっていう事です。

- 今の仕事はどれくらいやっているんですか?

田巻 - 8年くらいですね。会社をアトリエ的にも使わせてもらってるし、作品を作るときもそこでシルクスクリーンを刷っています。やっぱりシルクスクリーンは自分にとって大切ですね。

那倉 - でもやっぱりシルクスクリーンの中でも、特殊なことが得意だよね。

田巻 - 器用なんだよね、なんでも大概できちゃう。

那倉 - 画力あるもんね。

田巻 - 意外と描けるんだよ(笑)

田巻裕一郎

- 展覧会をやるとして、今ってPR文として批評家のコメントとかが載っているときがあるんですが、普通は展覧会の意味を補強してるんですが、今回はそこが分裂してるじゃないですか。そこも非アート的な試みになってるのかなと。

那倉 - プレスキットを作るにあたって美術業界で働いてる知り合いに聞いて、とりあえず美術業界のフォーマットに乗ってみるゲームをやってみようと思って。いくつか相手にしてくれたんですが、こんなにもらってくれないの?って。あとメディアって基本的に返事くれないんですね。ステートメントの作りとメールの体裁はあるアート集団とある雑誌のフォーマットをパクりました(笑) 体裁を整えようと思って。それで、時間がない中でプレスキットをこさえていくうちに、僕らがこさえたステートメントと作家自身によるレビューの間にある矛盾を擦りよせるわけにはいかない、分裂させたままにしなくちゃいけない、と思うようになりました。

那倉 - あのステートメントの書き方って前時代的な批評のパロディというか、ベタで超つまらないことなんですよ。クソのようにつまらないことなんですけど、作家がここまで作家ぽくなるとそれこそ神話みたいな感じで、有効だって思ったんですよね。ストーリーが展開していきそうな夢があるなと思って。現代アートの人って自分でしゃべれないとどうしようもないっていうところがあるわけじゃないですか。だし自分に対する批評まで想定してカウンター打てなきゃっていうレベルに見えるんです、そうなると自分の周りの批評をある程度コントロールできるわけで。

田巻裕一郎

那倉 - でも今回は田巻の友達が批評性のあるプレスキットを作ってバラ撒くところからはじめた。友達はなかなか批評はしないじゃないですか、でもちゃんと批評の言葉に則ってやれば、ディスでも悪口でもなくて、批評になるっていう。批評家でもなんでもないのになんでこんな批評の力をみたいなことを言ってもしょうがないですけど。でも批評の仕方さえも『My War』の扱いとかビックリマンチョコの扱いに近いんですよ、教科書的なことをやってるんで、一種のギャグですよね。真似してちょっとズレてるところを誰が拾ってくれるのかなというところですよね。だからマジで言ってることよりも、マジで言ってることを聞いたときのズレのほうが今っぽいというか。批評が補強装置になったら運動はないわけじゃないですか。

田巻 - 今回は3回目の展示で、やっとできたなという気持ちです。何より、ただの展示ではなくて、那倉くんみたいなミュージシャンと一緒にできるのは僕的にはすごく嬉しいんです。自分たちにはすごく通ずる部分があるし。あと僕は口下手なので、伝えられるものがないぶん、作品を見てもらえれば伝わるんじゃないのかなって思いますね。

那倉 - レセプションイベントに関してはMerzbowとENDONとZodiacのDJがあって、ZodiacのDJの冒頭に彼とのコラボがあるっていうことで、ライブ的にもそれがトリですからね。それで本人と本人の作品と全部みてもらうことにでモヤモヤしてもらいたい。ちょっとずつズレてくことが面白いと。一番大事なのはズレを楽しむってことですかね。まとまりのいい体のいい感じにはしたくないっていうのはありますね。イカれたサブカルの乱痴気騒ぎにするってことじゃないんですよ。逸脱するズレというより、僕と田巻の間に幽霊が宿るってことだと思うんですよね。それを見てもらいたいです。

Info

田巻裕一郎

タイトル:田巻裕一郎 第3回個展 “リトミック"
会期:2017年2月5日(日)~12日(日) 13:00-各日ライブイベント終了迄
会場:小岩 BUSHBASH
〒133-0056
東京都江戸川区南小岩 7-28-11
ファーストセントラル 101
TEL/FAX: 03-6657-9939
MAIL: info@bushbash.org
WEB: http://bushbash.org

【レセプションイベント】※どなたでもご参加頂けます。
日時 2017年2月5日(日)
ステージ開場 16:00 開演 16:30 終演 21:00予定
開場 小岩BUSHBASH
出演 Merzbow / ENDON / Zodiak / 田巻裕一郎 × Zodiak

入場料:展覧会のみ=無料 レセプション・イベント+展覧会=¥2000+1ドリンク

主催:田巻裕一郎
共催:G.G.R.R.

お問い合わせ:y16osan@gmail.com ( 田巻裕一郎)

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