2016 Best Or Worst by チャッピー源(思い出野郎Aチーム)

MUSIC  2016.12.18  FNMNL編集部

いよいよ2016年も残す所、12月を残すのみ。今年も様々な作品の話題や、トピック、ムーブメントが起きては過ぎ去り、慌ただしい日々を過ごしていたという人も多いはず。そんな2016年をFNMNLなりに振り返る企画「2016 Best or Worst』。様々なジャンルで活躍する方々に、今年の個人的なベストもしくはワースト、もしくは両方をあげてもらった。こちらは思い出野郎Aチームのパーカッション担当で、VIDEOTAPEMISUC、Pun Pun Circleのサポート、井の頭レンジャーズのディレクション・ドラムなども行うチャッピー源の2016年ベスト。

2016 Best by チャッピー源(思い出野郎Aチーム)

やけのはら×ロンリー /『ヤングリーフEP』

やけのはら

コメント

古くはARB、ルースターズのめんたいロック、butchersやeastern youthを輩出した北海道、京都でインディー・キッズを沸かせているsecond royal界隈など、局地的に生まれたシーンが全国に派生し、一つの台風の目になることがある。

そして現在、晴れの国岡山で、ジャンルの壁を優に超えて日本全国に、いや、世界に羽ばたいている音楽家たちを私達は目の当たりにしている。Panorama Bar、Berghainなど世界の名だたるハコでプレイし、"恐るべき東洋からの輝く星"と評されるハウス・トラック・メーカーsano keita、パリの注目のレーベルAntinoteからリリースを果たした麗しきトラック・メーカーinoue shirabe、ポスト少年ナイフといっても過言ではないローファイ・ガールズ・ポップバンドaapsなど、岡山を拠点に花開くアーティスト達は枚挙に暇がない。

そんな今の岡山シーンを代表するパンクバンドといえば、今年9月に夢の伝道師やけのはら氏とコラボ7インチ『ヤングリーフEP』をリリースしたロンリーだろう。
本作、私もディレクターとして参加させてもらい、今年7月に岡山まで録音に行ったのだが、制作費の都合上、ロンリーに日本最古のライブハウスと言われている岡山のペパーランドで彼らのレギュラーイベント「やみよのさくせい」を開催してもらった。

出演は先にあげたsano keita、inoue shirabe、ロンリー、そして東京からはHei Tanaka、伴瀬朝彦氏、DJにやけのはら氏、思い出野郎Aチームのフロントマン高橋一と私。

やけのはら氏のオープニングDJで会場はすでに序盤から心地よいグルーヴに包まれる。続くロンリーのライブもグッとくる歌詞とメロディーでパンクキッズの心をわしづかみにして放さない素晴らしいパフォーマンスであった。
イベントも折返しに差し掛かった頃、sano keitaのライブが始まった。通称"岡山の戦車"とも言われている、自身の大きな体からあふれ出る余りにもフィジカルでタフなビートに高揚してトランス状態に陥る観客。MPCを操る姿はさながら魔神のよう。そして最後は感情が抑えきれなくなった人々のモッシュの嵐である。ハウスのトラックでダイブする人を初めて目にした。このシーンの一番の特徴とも言える、ハードコアもパンクもハウステクノも分け隔てなく、芯を持ったアーティストたちが偶発的に集まり、音楽を醸造し続ける、オルタナティブ岡山シーンの神髄を見た気がした。

さて、岡山シーンに少し触れた上で『ヤングリーフ』に話を戻そう。
コラボレーションの話が持ち上がったのは、ロンリーやsano keita、aapsなど岡山勢を招集し、昨年の江の島オッパーラで行ったパーティー、SOUL PICNIC x HEY MR.MELODY presents SOUL OLYMPICでのこと。
奇跡的な盛り上がりを見せたパーティーで、その夜のことはここでは書ききれないので割愛するが(たまたま遊びに来ていたPrins Thomasがsano keitaのライブに驚愕し、彼のレーベルRett I Flettaから2ndアルバムのリリースが決まった!)、とにかくそのマグネティックな一夜を7インチで形にしよう、ということから本作は動き始めたのだった。
幾たびもの打ち合わせという名の飲酒をやけのはら氏と重ね、ある時は岡山まで足を運び、ロンリーからラフ音源が到着。何度もラフをやり取りし、全員一致でこの曲は行ける、との確信を得た頃にはもう2016年の春が終わろうとしていた。
トラックの素晴らしさももちろんだが、着目すべきは多様なフィールドを独自のアイデアと鋭い言語感覚で渡り歩く、やけのはら氏と稀代の詩人ロンリーのvo岡崎氏の邂逅だろう。ここに詩の一部を引用させていただく。

まるで
カルピス サイダー にじむ味
あの海に向かって きしむ足
手を伸ばせば届きそうな空
青空 ひとつだけ 青空

春が終わり、夏が始まろうとしているあの何とも言えない、どうしようもなく気持ちが沸き立ってくるワクワクを、やけのはら氏の冒頭のラップは本能的に肌感覚で見事につかみ取り、夏にひとりごちるあの感覚を代弁してくれている。
それに呼応する岡崎氏のサビ部分も素晴らしい。

空いた部屋は海にしよう
夜になれば行けるような

抽象的だがでどこか孤独で刹那的な歌詞の織り成す世界に、切なさの美学が凝縮されている。
この2行を聞いただけで既に、岡崎隼という詩人の世界に引き込まれ、共鳴し合っているあなたがいるだろう。固有名詞や言葉数を抑え、イメージをできるだけ相手にゆだねる行間の妙に、とても無骨な優しさを感じるのは私だけだろうか。

本作「ヤングリーフ」は、何者でもない、何者にもなれない、うだつの上がらない私たちのアンセムである。
そしてこのアンセムは誰も拒絶しない。

残念ながら本昨7インチは発売後即完売、あとはロンリーのライブの物販にわずかに残っているのみとなっている。もしどうしても聞きたい、という人はやけのはら氏の出演するDJイベントに足を運んでみてはいかがだろうか。運がよければ「ヤングリーフ」をかけてフロアを沸かせるやけのはら氏を見ることができるだろう。

この一枚に私の夏は集約されている。10月に江の島オッパーラで7インチリリースパーティー『SOUL OLYMPIC』も行った。
ライブでももちろん披露されたやけのはら×ロンリーの"ヤングリーフ"で拳を突き上げ涙し、私の夏は終わった。

来年に向けての告知など

思い出野郎Aチーム、12月29日にソウルピクニック大忘年会を渋谷wwwにて開催!渋谷7th floorでアフターパーティーもあります!さらに、年明けライブ一発目はガールズラッパーY.I.Mと一緒に台湾THE WALLでライブします。セカンド・アルバムも鋭意制作中。楽しみに待っていてください!

プロフィール

思い出野郎Aチーム

チャッピー源(思い出野郎Aチーム)

思い出野郎Aチームのパーカッション担当。VIDEOTAPEMISUC、Pun Pun Circleのサポート、井の頭レンジャーズのディレクション・ドラムを担当。DJサモハンキンポーとしても活動中。

MUSIC

FASHION

CULTURE