革新的アイドルSHINeeの、コンサートでのアートコラボレーションの世界

今回からFNMNLでコラムをスタートする事になりました。韓国でデザイナーをしてるerinamです。えっ何者?という感じですが、韓国の音楽を入り口にそれにまつわるデザインやファッション、アートシーンに魅了され昨年から韓国に住んでいます。なんでも続けてみるもので、熱心にマニアックなことをネットに書き続けていたところ、FNMNLからこの度お声掛けいただきました。(ありがたや)

そこで、韓国のK-POPシーンから、まだ知られていないようなアーティストまで、それに関わるアートやファッションシーンを織り交ぜて紹介していけたらと思っていますが、そもそもFNMNLの読者の方は、K-POPをどうみているのか気になります。

 

K-POPの一般的なイメージとはどのようなものでしょうか。電子音に光る大掛かりなセットのミュージックビデオ、派手な髪色、濃いアイメイクの少年やホットパンツを履いた美女?

ですが、日本でのKPOPブームが2011年前後として5年以上たった現在、当初イメージされていたそのようなK-POPとは大きく形を変えているように思います。特に近年は、以前の派手な印象からより洗練され叙情的でミニマルなイメージを推すグループが増えました。また、ワールドワイドというのも大きなキーワードであると思います。

国外有名アーティストの提供する楽曲、振付、アートワーク。アイドルでありながらアーティストとしてアジアだけではなく、世界的な舞台でも活躍していることを象徴または誇示する為のもののようにも感じますが、そう言った取り組みを違和感なく昇華し、自分たちのものにしていると感じたのが、最近のSHINeeのソウルで開催されたコンサートです。

9/2~9/43日間ソウルで開催されたSHINeeのコンサート『SHINee world V』ではメンバーのKEYがディレクションに加わり、国内外の様々なアーティストとのコラボレーションが話題になりました。

SHINee
© S.M. Entertainment

コンサートの予告ポスターや当日のグッズや映像をイラストレーターBRIDGE SHIP HOUSEANDY REMENTER、作家Seong Libの三人のアーティストが制作し、衣装を韓国ブランドのCHARM’S、KYEとコラボレーションしました。

KEYが起用を提案したという日本人のイラストレーターBRIDGE SHIP HOUSEは、ポスターとグッズにイラストを提供。

8月末には今回コラボレーションを企画したメンバーのKEYとのトークショーも開催されました。大きな話題となりグッズは3日間ともに即時ソールドアウト。グッズを求める声の多さに、SHINeeの所属するSMentertainmentがプロデュースするSMTOWN@coexartiumにて、9月中旬より再販が決定しました。コンサートではイラストをテキスタイルに使用した衣装も着用された。

同じくポスターを制作したANDY REMENTERは、New York TimesMTVWarner Brothersなど多くのメディアにとりあげられるアメリカの有名なイラストレーターであり、今回のコラボレーションが発表された時も驚きました。コンサートのTeaser posterを作成した他、イラストをフレームのように使用したアニメーション映像も使用され、色使いのポップさや少し摩訶不思議な世界観がSHINeeによくマッチしていました。

SHINee
© S.M. Entertainment

Seong libは、コンサート前に発表されたティザームービーを制作。洗練されたイメージがコンサートの期待を高めてくれました。(アイドルのコンサートの告知がアニメーションなんて!)

コンサート中もFarewell My Love”という楽曲の際に巨大な幕にSeong libのアニメーションを写した前で歌う演出があり、切なく叙情的な雰囲気を演出していました。

 

今回同じコンサートでありながら、アーティストの写真を使用せず、このように三人のアーティストが制作したポスターを発表し、それぞれ全く違うイメージを打ち出してきたことが面白かったです。

衣装制作でもメンバーのKEYがディレクションで加わっており、2つのブランドとコラボレーション。
まず、TシャツにSHINeeのメンバーの意見に沿ってメンバーそれぞれがゾンビになったイラストをプリントした衣装を制作したKYE。

SHINee
© S.M. Entertainment
SHINee
© S.M. Entertainment

SHINee

KYEはロンドンのCentral Saint Martinsという名門芸術大学・大学院を最年少で入学・卒業したデザイナー、ケ・ハンヒのブランド。

SHINee
Via KYE
SHINee
Via KYE

KYEはニューヨークコレクションにも参加していて、ソウルでのコレクションは毎回特に多くの有名人が見にくることでも有名です。ソウルコレクションの中でも見るのが難しいコレクションの1つで、毎シーズンテキスタイルが特徴的。

今年はshu uemuraとコラボレーションコスメを発売したり、デリム美術館系列のクスルモアタングジャンでの展示や、コンビニにKYEとコラボしたパッケージのプリンが発売されるなど幅広い分野で活躍していました(さすがにプリンは驚きました)

SHINee
Via KYE
SHINee
Via KYE
SHINee
Via KYE
SHINee
Via KYE

ファッション以外にも高いアート性で注目されているブランドです。個人的にはKYEのコレクションムービーはアーティスティックかつ使用楽曲もかっこいいので、ここで1つご紹介します。

 

また別の衣装では、こちらも韓国のブランドCHARM'Sとコラボ。

SHINee
Via CHARM’s

CHARM’Sはまだ3年程の若手ブランドですが、キャッチーなデザインとポップな色彩でアイドルなど有名人の着用される機会が多く、カップルルックを提唱している為(韓国ならではですね)性別問わず楽しめるデザインで10代20代の若い人たちを中心に火がつき昨年あたりから一気に有名になったブランドです。ソウルコレクションでは若手ブランドにも関わらず、他の有名ブランドと肩を並べて一番大きいS1会場で行っています。

夏に行われたCHARM’SのフリーマーケットにはメンバーのKEYもゲストで来ました。

SHINee

普段はポップな色彩のブランドですが、今回は衣装の使用曲に合わせてシックなイメージの衣装を作っていたのでCHARM’Sの新たな一面のように感じました。こういった点がコラボレーションならではの面白さですね。

SHINee
Via CHARM’s

SHINee

このように今注目を集めるそれぞれ違った強い個性を持つブランドやアーティストとコラボレーションしながら、SHINeeらしくまとまった印象になっていたのが印象的です。

Color of SHINeeというコンサートのタイトルを掲げ、それぞれ違うカラーも一つのテーマとして受け取れたのも良かったと思います。ブランドデザイナーの衣装の製作などは珍しい話ではないかもしれませんが、直接アーティスト自身がコンタクトを取り意見を交わしながら作成している点や、アーティストやブランドを全面に打ち出してのコンサートというのは斬新。本来アイドルというのは年齢的にも若くて、もしかしたら音楽そのものよりもアーティスト自身に興味が示されるものでありながら、音楽的にもその他の演出にも本当にかっこいいものを提案し続ける事・ファンもそれらをかっこいいものだと理解してついてこれると思っている自信が、SHINeeにはあるように思えます。

今回のようにコラボレーションしたアーティストやブランドがどれだけ芸術的に著名であるとか、韓国ファッションを牽引する存在であるとか知らなかったとしても、ああ、こういうかっこいいものがあるんだなと誰でもスッと受け取れるような、ニッチなものもメジャーの大きい間口から誰もが楽しめるように与えてくれる環境がK-POP周りにはあるように感じます。

自分がまだ中学生くらいで好きなアイドルがこのように最先端のファッションやアートを見せてくれていると思うと、当たり前にこの大衆音楽の中で育っている韓国の若いファンが羨ましい。

韓国といえば、K-POPというほど一般的に浸透された一つのシーンを形成しているKPOPだが、やはりK-POPの流行の一因は音楽的なことだけでなく、映像だったりデザインだったりファッションだったり様々な文化によって総合芸術のように成り立っていると思います。少し前まで韓国のファッション?韓国のデザイン?と言われてもピンと来てなかったのが、この数年でどんどん面白いものが生み出され、それらの新しいものをどんどん取り入れようというようなフットワークの軽さやスピード感・若者の心を掴むような旬な感覚が韓国にはあるように感じる。だからこの数年でK-POP自体もイメージを大きく変えてきたのではないでしょうか。

そういうインディーなものをどんどん受け入れていく土台のあるK-POPというメジャー文化に起用される韓国のインディーなアートシーンを知るのも、一つの面白みではないでしょうか。

執筆経験のない私なりに、少しずつそういった部分を伝えていこうと思います。

ちなみに、SHINeeは今月90年代のニュージャックスウィングの”1of1”という楽曲でカムバック(韓国でニューアルバムの発表をカムバックと言う)し、レトロフューチャーのコンセプトに合わせてCDとは別にカセットテープも発売、CDには面子が同封されてます。(め、メンコて…!)

 

 

今回も音楽的にもビジュアル的にもコンテンポラリーバンドという名にふさわしいメインストリームでありながら少し風変わりで新しい試みがたっぷ詰まったアルバムと言えるでしょう。

SHINee

カセットテープについては、CDが売れず、音源をダウンロードコードのみで販売する文化も日本より進んでいる韓国でデジタル時代に逆行していくような面白い試みでは。

今回の楽曲はカセットのザリザリとした音質とよくマッチするので、音楽好きのFNMNL読者の方は是非カセットテープを。

また、今回の記事で紹介したSHINeeのソウルでのコンサート 「SHINee world V」が「SHINee WORLD V in JAPAN」として開催が決定。

日本ツアーとは一味違う、ワールドツアーならではのSHINeeの世界の魅力を感じられるライブです。

ファッションやアート、様々な最先端の創意工夫を散りばめた今回の 「SHINee world V」を是非日本で体感してみて下さい。

▪︎公演日程

2016年12月9日(金)横浜アリーナ 17:30開場/18:30開演

2016年12月10日(土)横浜アリーナ 16:00開場/17:00開演

2016年12月11日(日)横浜アリーナ 14:30開場/15:00開演

▪︎チケット代金

全席指定 11,000円(税込)/枚

http://www.shinee.jp

________

Erinam
韓国在住のグラフィックデザイナー ・イラストレーター
韓国ブランド等のアテンド・コーディネーターとしても活動。

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