Simon Fowler & UC EASTインタビュー 元おかき工場の山本製菓での合同展、それぞれのスタンス、場所と作品

展示のタイトル『さび』やねんけど。だれが決めたん?どっちの?さび?

Simon - 錆びる方の。けど、わびさびでもいい。

UC EAST - 建物は錆だらけやから。

(みんなで『シン・ゴジラ』を観に行くという中断を挟んで…。)

んで、や、山本製菓…

UC EAST - 聞く気ないやん。(笑)

思い出してんねん…。ここでの展示は何回目?

UC EAST - 2回目。

きっかけは?

UC EAST -インスタで山本製菓を見付けて誰かに紹介してもらった。インスタのDMで「やりたい」って言って、下見に来た時に「ここで絶対やりたい!」って思って「やらしてくれ!」って言って決まった。まだその時は山本製菓としての展示が2回目が終わったくらい。これは、早い者勝ちでやりたいと思って。自分の個展やけど、山本製菓と山本製菓スタッフと私で作る、共同作みたいで楽しかった。

絵を書き終わってからもずっと1ヶ月間ずっと展示方法をいじってた。最初と最後で全然展示の様子が変わってた。

建物の感じはどうですか。

UC EAST - ちょうどホワイトキューブに飽きてて。面白いところで展示したいなって思ってて。ギャラリーとか全然知らんし。絵描きの友達もおらんし、そんなタイミングで。

何がええん?

UC EAST -ここは場所の印象が強いから、下手したらのみこまれる、完全に。もともとギャラリーじゃなくて、お菓子工場やから。だから面白いんやけど。ここの壁の感じはすぐに作られへんやん。約60年の歳月があって出来た壁やから。

作品の感じって変わりつつあるん?

UC EAST - 徐々に変わりつつあって…。この3月の展示で全然違う絵になったもん。

ここで作業したんやんな?

UC EAST - 家はゆったりする所やから。滞在して制作出来るとこもないから、山本製菓はそこらへんは柔軟にしてくれるから。

Simon - こういうところですると時間の感覚がなくなるから。過去も未来も考えずに、今だけを考えて作品を作る。

UC EAST - ちょっと話変わるんやけどな…。

Simon - (話を続ける…)

ちょっと、ごめんやけどインタビューやから。話変えんとってくれる?(笑)

UC EAST - ごめんごめん (笑)

Simon -3年前、昔に蒲田に3ヶ月くらい泊まったことがあって。シン・ゴジラが最初に壊した場所。そこに住みながら描いた作品がこれ。

simon Fowler

予言してるみたい。

Simon - 人が住んでいない所に住んで、作品を作ると、作品のイメージと場所のイメージがコラボレーションし始める。山本製菓に入った時も同じようなことを感じた。今みんなで『シン・ゴジラ』を観て、2人で作るっていうのも影響あるかもしれない。時期も。

UC EAST - 時期は大事。季節感は大事。だってギャラリーで季節感あるところってないよな。ここはエアコンもないから。しかも外の光とかも入るから、日中と夜で作品の雰囲気も変わるし。建物は大事。こういう建物が残っているのはすごい。

なんで山本製菓の昇太郎君はギャラリーをやろうと思ったん?

昇太郎 (山本製菓) -元々こういう場所をやりたいと思ってたわけではないけど、去年の頭ぐらいに大阪に帰ってきてから元々祖父母がおかき工場をやってたここに住むようになって。子供の頃走り回ってた工場も気づいたらかなり朽ちてて、でもそれが好きやったし、空間も面白かったし、ここでなんかやりたいなと。そこでスタッフのやっちゃんと久しぶりに再会したらとても気に入ってくれて、で一緒に住んでたスタッフのミカも絵を描いてたりしてたからじゃあ一緒に片付けよかというところから始めました。そのときに改装とかリノベーションもせずに、時間の流れのまま朽ちていくのがいいなと思ってそのまま。本当のことを言うと、埃を拭くのもいやなくらい。そのままにしたい。

Simon - 西成っていう場所の歴史とか調べてる。

UC EAST - 西成って言うとすごく「えーっ」って顔もされるけど。

実際やってみて、場所って作品にとって大事なの?

UC EAST - 山本製菓でやって思った。それまでは作品がよかったらいいって思ってたけど、この間の個展の時に設備とか展示方法とか考えたり、経費掛けたらその分帰ってきた。やっと展示の良さがやっとわかった。

どうプレゼンテーションしよう、受けてに何を考えさせようかってことを意識したの?

UC EAST - いや、むしろ前までそう思ってたけど、前回から完全に自分のやりたいようにやってから、周りはごっつい観てくれるようになった。

シンプルに作品に向かうようになったから。周りの人じゃなしに。逆に削ぎ落として。考え方も。そしたら周りからもストレートに感想を返してくれるようになった。いろいろ意見言ってくれるようになった。

じゃあ白いキャンバスに向かって、ホワイトキューブに飾ったら、作家の気持ちや表現を伝えてるって考えられてきたけど、ちゃうってことやんな?

UC EAST - まあそのキャンバスとかを和紙に変えたり、ホワイトキューブを山本製菓に変えたりすることも大事ってことや。

自分の作品をより面白くできるのは、ここで展示することやし。場所がよければ作品はもっとよくなるし、場所に負けたくないし。

Simon - いろいろなこの街にまつわる話を聞いたよ。西成のバックグラウンドとか。西成の説明とか、今宮とか。昔のロンドンみたいで。

UC EAST - ギャラリーやと、展示をしてどうなるかっていう「絵」が見えてしまうねんな。

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